中学生や高校生で乳歯がある方必見!乳歯が抜けない理由とは?
監修:歯科医師 高島光洋
そろそろ生え換る頃かなと期待していた歯がなかなか生え換らず、気付いたら中学生、更に進んで高校生。さすがに不安になってきますよね。
もしかすると、生え換るための永久歯が存在していない可能性もあります。永久歯が存在しないからといって治療法がないわけではありません。
治療する時期で治療法が異なりますが、治療法はあります!今回は、「乳歯が抜けない原因」と「その対策や治療法」についてお伝えします。
1.乳歯が抜けない!生え換わるタイミングについて
2.乳歯が抜けない!その理由とは?
3.乳歯が抜けない!永久歯は大丈夫?
4.永久歯が存在しなくても矯正治療はできる?
5.大切なのは歯が抜けたスペースを放置しないこと!!
6.乳歯や歯ならびについてのご相談を受け付けております
乳歯が抜けない!生え換わるタイミングについて
乳歯から永久歯への生え換わりは6歳から12歳にかけて徐々に進みます。
もちろん個人差はありますga、目安としては早い子で保育園・幼稚園の年長くらいから進み始め、中学校を卒業するくらいに永久歯が生え揃います。
生え換わりが開始する6歳前後には下の前歯が生え、同時期に第一大臼歯が生えます。
7~9歳前後には上下の前歯、10~12歳前後には第一小臼歯、犬歯、第二小臼歯の順に生え換わります。
12~14歳前後に第二大臼歯と呼ばれる、1番後ろに位置する歯が生えて永久歯の生え換わりは終了します。
親知らずがある方は、17~21歳頃に生えることが多いです。
乳歯が抜けない!その理由とは?
永久歯形成の遅れ
歯は、歯胚(しはい)と呼ばれる細胞の集合体が歯茎の中で作られ成長し、歯の頭部分が作られることで形成されます。歯が形成され歯茎から出てくるまで約3~5年はかかります。
体の成長に個人差があるように、歯が形成し始め生えるまでも個人差がかなりあります。永久歯の形成が進み生えてこようとすると、乳歯の根っこが少しずつ吸収され、乳歯がグラグラして抜けます。
しかし、永久歯の形成がゆっくりだと、乳歯の根っこも吸収されにくく、乳歯がなかなか抜けないこともあります。この場合は、永久歯が生えるまで経過をみれば大丈夫です。
先天性欠如
先天性欠損症、無歯症とも呼ばれます。歯茎の中で形成されるはずの永久歯が形成されず、歯自体が存在しない状態で、もちろん永久歯は生えてきません。
この場合、乳歯は生え換わることなく残った状態になり、乳歯を永久歯として使用することになります。注意する点は、永久歯より乳歯の方が虫歯になりやすいということです。
歯はエナメル質という非常に硬い組織に覆われていますが、その厚みが永久歯は厚く、乳歯は薄いので虫歯菌によって歯が溶かされやすいのです。
また、乳歯の根っこは短いため、歯周病が進むと抜けやすく、また自然に根っこが吸収されて抜けることもあります。
先天性欠如の場合は歯科医院で定期的にレントゲン写真で根っこの状態も含めて確認し、なるべく長く残せるように自宅でのケアもしっかり行うことが大切です。
埋伏歯
本来生えるはずの歯が歯茎の中に埋まったままの状態を指します。原因としては、歯の生える隙間が少なかったり、歯自体が横に傾いていたりすることが多いです。
この場合も、乳歯の根っこが正常に吸収しないことで乳歯が抜けないことがあります。歯並びや他の歯に悪影響がなければ経過観察になります。
悪影響を及ぼすようなら、外科手術により骨の切削を行い埋伏歯を引き出して、正常に生えるようにする治療を行うこともあります。
乳歯が抜けない!永久歯は大丈夫?
生え換わりの時期なのに、なかなか乳歯が抜けないと心配になりますよね。
乳歯が抜けない・永久歯が生えてこないときにまず確認すべきことは「乳歯の下に永久歯が埋まっているかどうか」です。
これは、歯科医院でレントゲン撮影を行えばすぐに確認できます。永久歯の有無やその状態によって、次の対策を考えます。
永久歯が存在する場合
焦らなくても大丈夫です。経過を見ながら永久歯が生えてくるのを待ちましょう。
永久歯の位置がずれている場合
永久歯の存在は確認できるが、永久歯が乳歯の真下に位置していない場合も、乳歯の根っこが吸収されず乳歯が抜けないこともあります。
このケースでは、乳歯を抜く治療を行った後、永久歯の位置を正常な位置に戻す処置を行うことがあります。
永久歯が存在しない場合
検査の結果、歯の本数が足りない「先天欠如」と診断された場合は、乳歯ができるだけ長く残るように歯磨きやフッ素の活用などでしっかりケアを行いましょう。
他の歯が全て生え揃う中学生頃に、乳歯(先天欠如歯)を抜いて、そのスペースを閉じるための矯正治療を行うこともあります。
もし、大人になってから抜けた場合は矯正治療が可能な場合もありますが、矯正治療で改善できない症例では欠損歯に対する治療が必要となるので、入れ歯・ブリッジ・インプラントの治療のどれかを選択することになります。
先天欠如は早めに知っておくことが重要です。
早めに知ることができれば「乳歯を守る」「ベストなタイミングで矯正をする」「その他の治療をする」など多くの選択肢の中から希望の方法を選ぶことができます。
小さな頃から生え換わりを確認し、もし気になることがあれば歯医者さんに相談しましょう。
永久歯が存在しなくても矯正治療はできる?
先天性欠如歯の矯正治療は可能ですが、行う時期によって方法が変わります。
20歳までに治療を行うことができれば、矯正治療を行うことができます。30歳以降になると骨が硬い傾向にあり歯が動きにくいことがあります。
この場合は、矯正治療ではなく乳歯が抜けた後のスペースに人工的に歯を補う治療を行います。
11歳頃までの治療法
歯科医院で先天性欠如歯が確認されても経過観察になることが多いです。
不正咬合が確認され、歯並びや噛み合せの状態が悪く矯正治療が必要な場合でも、先天欠如歯に位置する乳歯は抜歯せず、顎の成長を促すための矯正治療を行います。
その後、先天性欠如歯以外の永久歯が全て生えたタイミングで(中学生頃:12歳くらい)、先天性欠如歯に位置する乳歯を抜き、歯を移動する矯正治療を行います。
12歳~20歳代の治療法
中学生になる12歳頃は永久歯の生え換わりが完了する時期です。存在する全ての永久歯が生え揃ったら先天欠如歯に位置する乳歯を抜きます。
乳歯を抜いた部分には隙間ができるので、矯正治療で隙間が埋まるように歯を移動します。
特に10代は、比較的、骨が柔らかく歯が動きやすい状態であるため、12歳~18歳頃が矯正治療を行うベストタイミングです。
乳歯が抜ける可能性が高いのは20代~30代頃で、急に抜けることがあります。そのためにも、この時期に矯正治療を行っておくと良いでしょう。
大人になって骨が硬くなり始めると、矯正治療が難しくなります。早めに気付けられるように、なかなか抜けない乳歯がある場合は、歯科医院でレントゲン撮影を行い永久歯が存在するか確認してもらうことが大切です。
30歳過ぎてからの治療方法
30歳以降になると、乳歯が抜ける可能性が高くなり、永久歯とサイズや歯の強度が異なる乳歯だと噛み合せがズレることもあります。
また、骨が硬くなり始め歯が移動しにくくなることで矯正治療が難しい場合もあります。
その場合は、乳歯が抜けてから人工の歯を補う治療を行います。この治療の選択肢には入れ歯、ブリッジ、インプラントがあります。
【部分入れ歯】
保険で行える治療です。人工歯を、隣接する歯にひっかけて使用します。そのため、隣接する歯に噛む力による負担がかかり、歯茎の炎症を引き起こし歯周病を進行させてしまう可能性も高くなります。
噛む力も弱くなるため噛みにくさを感じることもあります。2週間程で作成でき、その後、慣れるまで何回か調整を行います。
【ブリッジ】
両側にある歯を削り、被せ物が付けられる状態にします。両側の歯につける被せ物の間に、ダミーの歯を繋げた被せ物を作成します。両側の歯を土台にして被せ物を接着します。入れ歯に比べて違和感なく使用できますが、ブリッジも両側の歯に負担がかかりやすいです。
噛む力は、土台となる歯の状態にもよりますが、天然歯の6割程度になると言われています。2週間~1ヶ月くらいで作成できます。
【インプラント】
手術により歯茎を切開し、中の骨を削って人工歯根(フィクスチャー)を埋入します。この歯根の上にアバットメントと呼ばれる土台部分をはめて、最後に被せ物をして装着完了です。
インプラントの特徴は、歯の欠損部分を補う人工歯の中では1番天然歯に近く、他の歯にも影響無く使用できることです。食事するときも天然歯と同じように噛むことができるため違和感も少ないです。注意していただきたい点は、正しいケアを行うことです。
インプラントは構造上、特に歯と歯茎の間部分が磨きにくいため、歯科医院で必ず磨き方を教えてもらいましょう。
※乳歯を抜いた後のスペースが狭いと、インプラントを埋入できないことがあります。その場合は、最初に矯正治療を行い必要なスペースを作ってから、インプラントを行うこともあります。
大切なのは歯が抜けたスペースを放置しないこと!!
先天欠如歯に位置する乳歯が抜けた場合、放置するのは危険です。乳歯が抜けたスペースを放置した場合に考えられることは...
▶︎歯が抜けたスペースに、隣の歯が倒れてきます。
歯の性質上、長期間スペースが空いたままだと隣の歯が傾いて、スペースが塞がってきます。スペースが塞がると歯を補うことも難しく、治療がより困難になります。
治療を行うとしても、まずは矯正治療を行い、歯を正常な位置に戻してから行うことになり、時間と費用が余分にかかることがあるため注意しましょう。
▶︎スペースに対向する歯が正常な位置から突出してきます。
歯の性質上、歯が抜けてスペースができると対向する歯が時間と共にゆっくりと移動して突き出てきます。この場合もスペ-スが塞がってくるため、治療が難しくなります。乳歯が抜けたら早めに治療を行うことをおすすめします。
▶︎スペースがあると近くの歯が動き歯並び・噛み合せが悪くなります。
スペースが空いたままになると、歯が移動して正常な位置からズレるため歯並びや噛み合せも悪くなります。そうなると、他の歯の寿命さえも短くしてしまう可能性もあります。
先天欠如歯に位置する乳歯が抜けたら必ず歯科医院に行って診てもらうことがとても大切です。先天欠如歯は治療できないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、治療法はあるので安心してください。
急なことで、治療方法を選択するのに時間が必要な場合は、まずは応急処置で対処し一度考えていただいてから治療を進めることもできます。
乳歯や歯ならびについてのご相談を受け付けております
インビザラインって聞いたことありますか?インビザラインはマウスピース型の矯正装置です。
大きな特徴は、透明な樹脂性のマウスピ-スを使用して矯正治療を行うため、目立たず矯正治療を行えるところです。
また、取り外しも可能であるため、食事や歯磨きも通常通り行うことができるので矯正中に虫歯や歯周病になるリスクが低い等メリットが多くあります。マウスピースの交換も自宅で行えるので通院頻度も比較的少ないです。
先天欠如歯のある方の矯正治療にもインビザラインを適用できます。
インビザラインには「インビザラインファースト」と呼ばれる子供専用の装置もあります。適用年齢は6~10歳頃で、生えかけの歯に対してもアプローチできるように設計されます。
小さいお子さんに多い、歯並びに悪影響となる舌の癖や指しゃぶりの改善にもインビザラインは対応できます。
6歳臼歯(第一大臼歯)が生える時期は、永久歯の噛み合せができるスタート地点になります。同時に永久歯の前歯が生え始める時期でもあるため歯並びに興味を持ちやすい時期でもあります。
6歳臼歯の噛み合せは非常に重要で、この時期から矯正治療が必要なお子さんにもインビザラインを適用できることで、見た目を気にせず、より理想に近い噛み合せと歯並びを手にいれることが可能になります。
もちろん、永久歯が生え揃っている中学生や高校生でも適用できます。インビザラインは、歯や歯茎に大きな問題が無ければどの年齢でも治療を行うことができるのです。
歯の生え換わりや歯並びなどで気になることがあればお気軽にご相談ください。