矯正歯科ブログblog

  1. ひだまり歯科医院矯正歯科特設サイト
  2. 矯正歯科ブログ
  3. 予防矯正で子供の顎の小ささ・歯並びの悪化を改善

予防矯正で子供の顎の小ささ・歯並びの悪化を改善

監修:歯科医師 高島光洋


レジャーシートの上に寝転んで笑っている三人の子供

歯の生え換わりの時期に顎の成長が正常に進まないと、歯並びが悪くなりやすいです。
それは、顎が小さいままだと、乳歯よりサイズの大きい永久歯が生えるスペースが足りなくなるためです。

子供の歯の生え換わり時期は、体の成長期でもあります。この時期の、骨格や筋肉の健やかな成長は、歯並びや咬み合わせに対しても良い影響をもたらします。

この成長期に始められる「予防矯正」では、顎骨や口周りの筋肉にアプローチしながら歯並びや咬み合わせを改善することができます。

すでに、歯並びで気になる部分があるお子さんでも、年齢によっては「予防矯正」で改善できる可能性があります。

今回は予防矯正を始める「タイミング」「方法」「顎が小さいことで起こりうるリスク」などについて解説します。

顎の小ささは「遺伝・生活習慣・舌の位置」が主な原因

子供の顎が小さくなる要因には、「遺伝」「生活習慣」「舌の位置」が大きく関係します。それぞれの項目毎に詳しくみていきましょう。

◆遺伝
両親や祖父母に顎が小さい人がいると、子供や孫に遺伝する確率が高いです。遺伝子は、骨の成長スピードや発達を決定します。特定の遺伝子が両親や祖父母から受け継がれることで、顎の成長がうまく進まず、顎が小さくなることがあるのです。
また、遺伝子は他にも、成長ホルモンの分泌や筋肉の発達、顔の骨格を決めます。それらが顎の成長に関わることもあります。


◆生活習慣
顎の成長は、しっかり噛む(咀嚼する)ことで促進されます。そのため、やわらかい食べ物を中心に食べていると、咀嚼回数が少なくなって顎の発達がうまく進まない場合があります。食事の際は、なるべく歯ごたえのある物を選び、前歯で噛み切り、奥歯でしっかりすり潰しながら食べると良いです。顎周りの筋肉が発達し、顎骨も成長しやすくなります。
厚生労働省では、「1口30回咀嚼しましょう」という目標を掲げています。30回が難しい方は、最低でも10回以上を目安に、咀嚼回数を意識してみましょう。


◆舌の位置
舌の位置や動きは、顎の発達に大きく影響します。口が動いていない時、舌の位置は上の前歯の裏側の根元の歯茎(スポット)に先端が接しており、舌全体が上顎に吸着している状態が正常です。この状態だと、舌で上顎が押されて上顎の成長が促されます。しかし、舌が下がって下顎に置かれている状態だと、舌で下の前歯が押されて下顎が発達しやすくなります。そうすると上顎の成長が進みにくく、下顎が上顎より大きくなり、反対咬合になることがあります。

口呼吸をしていると舌が下がりやすいので、鼻呼吸を心がけましょう。

顎が小さいことで起こりうるリスクについて

顎が小さいことで引き起こされる問題として、「歯並び・咬み合わせの悪化」「口呼吸になりやすい」「矯正治療への影響」「口元へのコンプレックス」などが挙げられます。

◇歯並び・咬み合わせの悪化
顎骨が歯の大きさに対して小さい場合、歯が生えるスペースが足りず歯並びが悪くなることがあります。また、上顎と下顎の大きさのバランスの悪さは、咬み合わせにおいても無関係ではありません。顎が小さいと、「出っ歯」「叢生」「反対咬合」になりやすいです。

歯並びや咬み合わせの悪化は、将来的に顎関節症などの症状を誘発させることもあります。

出っ歯
上の前歯が前方に出ている状態の歯並びのことで、歯科専門用語では、上顎前突(じょうがくぜんとつ)と言います。下顎の成長が通常より遅く、上下顎骨のバランスの悪さから出っ歯になることもあります。

叢生(そうせい)
永久歯は乳歯より大きいです。そのため、乳歯が綺麗に並んでいても、永久歯も綺麗に並んで生えるとは限りません。顎が小さいと、永久歯の生えるスペースが足りないことで、歯と歯が重なって生えてくることがあります。この状態を「叢生」と言います。

受け口
歯科専門用語で反対咬合(はんたいこうごう)と呼びます。上顎が小さく、下顎が大きい状態になると、咬み合わせが反対になりやすいです。口呼吸が原因となることもあります。


◇口呼吸になりやすい
上顎骨は、鼻の内部にある鼻腔を形成します。上顎の発達が進まないと、顎だけではなく鼻腔も小さくなるため、鼻呼吸がしづらく口呼吸になりやすいです。


◇矯正治療への影響
矯正治療では、顎が小さくて歯を移動させるスペースがない場合に、歯を抜いてそのスペースを確保することがあります。これを「便宜抜歯(べんぎばっし)」と言います。基本的には、第一小臼歯あるいは第二小臼歯が対象となることが多いです。便宜抜歯をなるべく防ぐには、歯の生え換わりが始まる頃に矯正治療を始めることが効果的です。


◇口元へのコンプレックス
上記の項目でもお伝えしたように、顎の小ささは将来的に歯並びや咬み合わせの悪化を引き起こしやすいです。そうすると、口元にコンプレックスを感じるようになり、日常的に口元を手で隠す方もいらっしゃいます。歯並びや咬み合わせを改善しておくことは、人と接する時の表情の自信に繋がることもあります。また、顔の骨格の歪みや姿勢も整いやすいです。

顎の成長に効果的!成長期に始める「予防矯正」について

子供の成長期に、歯並びや咬み合わせの悪化を防ぐ治療があります。「予防矯正」と呼ばれる治療方法です。この治療は、子供の成長に併せて、正常な歯や顎の成長を促すことを目的としています。そのため、適応可能なのは乳歯と永久歯がお口の中に生えている時期(混合歯列期)で、5~10歳頃とされます(歯の生え換わりには個人差があるため多少前後することもあります)。

「予防矯正」により早期の段階でお子さんのお口に働きかけることで、将来的に矯正治療で必要になることもある便宜抜歯を防いだり、また、歯の動きやすい時期に治療を行うことで治療期間の短縮したりすることができます。

「予防矯正」には、以下の2つの方法があります。

予防矯正Ⅰ:マウスピース矯正

よく知られている矯正治療は、歯を移動させて歯並びや咬み合わせを整えます。しかし、「予防矯正」では、直接的に歯を移動させるのではなく、お口周りの筋肉、特に舌や唇を鍛えながらお口の成長をコントロールして、歯が正常な位置に並ぶようにします。

使用する矯正装置はシリコン製のマウスピースです。装着時の痛みはほとんどなく、小さなお子さんでも負担なく使用できます。1日のうち、日中の1時間と就寝時に装着し、保育園や学校などで装着する必要はありません。これに加えて、口周りのトレーニング(MFT:口腔筋機能療法)を10分程度行います。


<MFTの例>
ポッピング
舌を鍛えるトレーニングです。

  1. 上前歯裏側根元の歯茎(スポット)に舌の先端を接触させます。(舌を前歯にあてないように気をつけましょう)
  2. そのまま、舌全体を上顎に吸着させます。
  3. この状態を保ちつつ、下顎を下側に開きながら舌を離して「ポンッ」と音を発します。(勢いをつけて舌を離すようにしましょう)

この手順を20回繰り返して行います。

予防矯正Ⅱ:拡大床と拡大装置

拡大床や拡大装置は、顎骨や歯が並ぶアーチを横方向に拡大することを目的として使用します。これらを拡大することができれば、歯が生えるスペースや歯を移動させるスペースを確保でき、歯並びや咬み合わせを正常な状態にすることが可能です。拡大床と拡大装置は、形は似ていますがお口へのアプローチが異なるので、以下に詳しく説明します。


◆拡大床
拡大床は、歯自体にアプローチして歯が生える軸を外側に傾斜させながら、歯が並ぶアーチを拡大させます。大きく動かすと咬み合わせが悪くなるため、軽度の症例に適応されます。

下顎、あるいは上顎の内側に装着して使用します。顎の内側に接着する部分はプラスチック、歯に装着する部分はワイヤーで作られていて、装置の中心にはネジがついています。そのネジを回して装置を横方向に拡大する仕組みです。取り外しが可能なので、治療を始めて間もない頃はお子様のペースに合わせながら使用することができます。使用時間の目安は1日12~16時間です。


◆急速拡大装置
急速拡大装置は、顎骨にアプローチして歯が並ぶアーチを拡大します。
顎骨は、左右対称の2つの骨が真ん中で繋がっています。その真ん中部分正中縫合線:せいちゅうほうごうせん)に、急速拡大装置で力を加えて顎骨を少しずつ拡大します。
この2つの骨は、成長に伴って離れていきながら、離れた部分に新しい組織ができることで顎が成長していきます。その力をうまく利用しながら、歯が正常な位置に並ぶよう働きかけるのです。

急速拡大装置は金属製で、ご自身では取り外しできません。常に装着していることで持続的に装置からの矯正力が顎骨に加わり、効果が早めに現れやすいです。

「食事・呼吸・姿勢」が大切!お家で意識する顎の成長

お家でも、顎の発育について意識してみましょう。食事、呼吸、姿勢など、普段何気なく行っていることが顎の成長を妨げていることもあります。生活習慣の見直しは、顎の成長にとって大切です。


◇食事内容を見直す
噛みごたえのある物を食事に取り入れてみましょう。特におすすめは、体の成長に必要な栄養成分である鉄分が豊富に含まれている牛肉などの肉類です。他にも、タコやイカ、キノコ類、キュウリなどの生野菜などもおすすめです。ご飯の時だけでなく、おやつにも、おせんべい、リンゴ、するめ、おしゃぶり昆布などのように噛みごたえのある物を選ぶと良いです。

また、食べ物の大きさを変えるという方法もあります。食べ物の大きさが大きいと咀嚼する回数が増えるため、顎骨や口周囲の筋肉が自然と鍛えられます。厚生労働省が推奨している1口30回を目安に咀嚼してみましょう。


◇鼻呼吸を習慣化する
鼻呼吸をするときは、舌が上顎に吸着しており、唇は閉じています。何気ないことではありますが、常に行なっている呼吸時にこの状態を保つことにより、舌と唇の筋肉が鍛えられ、口周囲の筋肉が強くなります。それに伴って顎の成長も促されます。

また、鼻呼吸で鼻から吸った空気は、鼻内部にある鼻腔を介して体の中に送られます。外の空気が鼻内部を通ると、鼻毛により外部からの埃や細菌が体内部に入りにくく、細菌やウィルスからの感染を予防できます。そのため風邪を引きにくい体になりやすいです。


◇正しい姿勢を意識する
体の姿勢は、歯並びや咬み合わせにも大きく関係します。猫背で背中が曲がっていると、顎が前に出るため受け口になりやすく、口呼吸を誘発しやすくなります。まずは、座っているときも立っているときも、少し腹筋に力を入れて背筋を伸ばすように意識してみましょう。

特に、食事の姿勢は重要です。姿勢が悪いことで咀嚼回数が減ったり、奥歯で十分に噛めていなかったりすることもあります。そうすると、顎の成長が進みにくいです。椅子の高さと机のバランスを整え、必ず足を床につけて食事できるようにしましょう。

「予防矯正」で子供の成長期に歯並びへアプローチ!

矯正治療は、大人になっても可能です。しかし、子供の時期に行う予防矯正には、成長期ならではのメリットが多くあります。

子供の時期に行う矯正治療のメリット

  • 歯の土台となる顎骨にアプローチできるため、後戻りしにくい
  • 顎骨の幅を拡大できるため、便宜抜歯の可能性が低い
  • 顎骨が比較的やわらかく歯が動きやすい

成長期である歯の生え換わり時期に行う予防矯正は、顎の成長や永久歯の生えるタイミングに合わせて調整することができ、一緒にトレーニングを行うことで口周囲の筋肉の成長も促進することができます。そのため、小さい頃によく見られる指しゃぶりなどの口周りの癖も改善しやすいです。

しかし、お子さんが小さいうちに矯正治療を行うことが、お子さんの負担にならないか心配される親御さんもいらっしゃるでしょう。
予防矯正で使用する装置は、シリコン製のマウスピースで、痛みはほとんど感じることはないためご安心ください。

当院では、小さいお子さんでも予防矯正に取り組めるように、担当のスタッフと一緒に行います。まず、装置に慣れることから始めて、できるようになったら次の段階に進みます。治療は2~3年かかるため、お子さんの気持ちを第一に考えながら、続けられるようなプランで行なっていきます。

お子さんの歯並びや咬み合わせで気になることがありましたら、お気軽に当院へご相談ください。

矯正無料相談を予約する

無料メール相談はこちら