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虫歯でも歯列矯正は受けられる?治療の順番について

監修:歯科医師 高島光洋


虫歯があっても矯正治療は可能です。

虫歯には、1回の治療で治る小さい初期虫歯から、通院回数が必要になる大きな虫歯があります。

すでに虫歯がある方、あるいはもともと虫歯になりやすい方の中には、矯正治療を始めたくても虫歯があったらどうなるのか?と不安に思う方もいるのではないでしょうか。

基本的には虫歯を治せば矯正治療を行うことができます。虫歯の状態によっては虫歯治療を行いながら矯正治療を行える場合もあります。

今回は、「虫歯があった時の矯正治療の進め方」や「虫歯治療と矯正治療を同時進行できるケース」、「矯正治療中にも効果的な虫歯対策」についてご紹介します。



虫歯があっても歯列矯正は始められる?

虫歯になっている歯があっても矯正治療は可能です。

先に虫歯治療を行うか、同時進行で矯正治療と虫歯治療を行うかは、虫歯の大きさによって治療の順番が異なります。

虫歯が大きく進行し、被せ物の装着が必要な場合や、神経の治療が必要な場合は、最初に虫歯治療から始めます。被せ物を装着する場合は、矯正治療中は仮の歯を装着して、矯正治療完了後に咬み合わせに適合した被せ物に交換します。

比較的小さい虫歯(初期虫歯)や、矯正装置を装着しても治療できる箇所の虫歯であれば、矯正治療と並行して行うことができます。この場合は、早めに矯正治療を始める事ができます。

矯正治療のカウンセリングは虫歯治療より先がいい?

矯正治療では、すぐに矯正装置を装着することはありません。まず事前に精密な検査を行います。

この検査では、レントゲンやCTを撮影し、埋まっている歯の確認や顎骨の状態を確認します。また、歯の並びを見やすくするためにお口全体の型どりを行い模型も作成します。そしてもちろん虫歯や歯周病のチェックも行います。

そのため、矯正治療をお考えの方は、痛みなど緊急性がないのであれば、まず虫歯治療を行う前に矯正治療のカウンセリング・検査を行うのも1つの方法です。矯正治療の検査とともに虫歯の状態も確認することができます。

先に矯正歯科医を決め、治療計画を立てた上でその計画に沿って虫歯治療を行った方が、時間のロスや必要のない虫歯治療を減らせることもあります。


比較的小さな虫歯や矯正装置から離れている小さめの虫歯は矯正治療を始めてからでも治療ができます。

また、矯正治療で抜歯が必要と診断された場合、その歯に虫歯があってもわざわざ虫歯治療を行う必要がなくなります。

もし、痛みやしみる等の症状がある虫歯の状態であれば、虫歯治療が最優先になります。その際は、虫歯治療を行う歯科医に“矯正治療を考えている”ということを事前に伝えて、スムーズに矯正治療を始められる方法を考えてもらいましょう。

虫歯治療にかかる治療回数について

樹脂素材の詰め物での治療

虫歯部分を削り取り、形を整えた後、ペースト状の樹脂材料を流し込み、光をあてて硬化させます。

▶治療回数1回
▶虫歯深度1〜3ミリ
▶適応症例

比較的小さめで、ほとんど症状が出ていない虫歯に適応します。樹脂は金属などと比べると強度が低いため、噛む力が継続的にかかると欠けてくることもあります。そのため、正常な歯質が十分に残っている状態で、虫歯範囲が1本の歯に対して⅕くらいにとどまる場合に適応されます。

セラミックや金属素材の詰め物・被せ物での治療

虫歯を削り取り、形を整えた後で、歯の型取りを行います。型取りにより石膏模型を作成し、その模型を元に詰め物や被せ物を作成します。

作成には1〜2週間くらいかかります。作成後、歯に特殊な接着剤を使用し、詰め物あるいは被せ物を装着して治療完了です。

▶治療回数2〜3回
▶虫歯深度2〜5ミリ
▶適応症例

症状としては、しみる症状が続いたり、虫歯部分が黒っぽくなっていたり、少し穴が空いている場合があります。
虫歯範囲が1本の歯に対して⅓くらいにとどまる場合は詰め物(インレー)で対応できますが、虫歯範囲が大きくなると被せ物(クラウン)で対応します。
歯と歯の間の虫歯にも適応されやすいです。
樹脂の詰め物の適応範囲より虫歯が大きく、樹脂素材の強度では対応できない場合に適応されます。

歯の神経の治療

歯の内部に虫歯が広がっているため、神経が通っている部分(歯髄腔)まで歯を削ります。そこから、虫歯に感染した神経を細い器具で除去してキレイに洗浄します。

神経の治療以外にも土台や被せものを作成する必要があります。

▶神経の治療約4回
▶歯の土台作成1〜2回
▶被せ物の型取り1回
▶被せ物装着1回

歯が完成するまでの治療回数は8回くらいが目安になります。

▶虫歯深度が神経までに達する
▶適応症例

症状としてはズキズキした痛みが出やすいです。痛みを放置すると、神経が壊死するため、痛みがおさまってくることもあります。
虫歯が、歯の根っこ部分まで広がっている場合は、抜歯の可能性が高くなります。しかし、歯の根っこが残せる場合は、神経の治療が可能になります。
以前に神経の治療をした歯の根の先に膿がたまっている場合も、再度、神経の治療を行うこともあります。

矯正治療中に虫歯ができた時の治療法

矯正装置装着後、歯が移動し隙間が空いてくると、歯と歯の間に隠れていた虫歯が確認できることがあります。

また、矯正治療期間は長期に及ぶため(約2~3年)、矯正治療中に虫歯ができる可能性も考えられます。

比較的小さな虫歯であれば、矯正装置を外さなくても治療できる場合もあります。しかし、虫歯の位置や大きさによっては矯正装置を部分的に外して虫歯治療を行う事もあります。

矯正治療を進めながら虫歯治療を行えるケースでは、虫歯になっている歯を矯正治療により、一旦、治療しやすい場所に動かしてから治療することで、歯を削る量を最小限にし健康な歯の部分をなるべく残す虫歯治療も可能になります。虫歯治療完了後、矯正装置を外した場合は装置を元に戻してから矯正治療を再開します。

マウスピース矯正治療法の1つであるインビザラインは透明なマウスピースを矯正装置として使用します。

そのため、矯正治療中でも目立たず、取り外しもできるので虫歯治療が必要になっても通常通り虫歯治療が行えます。ただし、虫歯が大きく、被せ物での治療が必要な場合はマウスピースの再作製が必要になることもあります。

家でもできる効果的な虫歯予防

ブラッシング

歯磨きをする前に、まずはしっかりうがいを行いましょう。目安は1分間です。食べかすは時間の経過とともにむし歯や歯周病の原因となるプラーク(歯垢)になります。うがいで大まかな汚れを落とすことで歯磨きの効果は高まりやすいです。液体歯磨きでうがいをした後に、歯磨きを行うのもおすすめです。

歯磨きは、歯2本分くらいの間隔でこすりながら小刻みに動かし、かみ合わせの面、内側の面、外側の面に分けて磨くと効果的です。

就寝中は唾液の量も減少するため、虫歯ができやすくなります。特に寝る前の歯磨きは忘れず念入りに行いましょう。

矯正治療中であれば、矯正装置用の歯ブラシやタフトブラシを使用することで磨き残しを軽減できるでしょう。

デンタルフロスの併用

歯と歯の間は、歯ブラシが届きづらく虫歯ができやすい箇所です。歯と歯の間はフロスを使っていただくのがおすすめです。

フロスは隣の歯と接する歯の側面や歯と歯茎の間の汚れを取り除くことができます。

注意としては、フロスを歯茎に強く当てると歯茎が下がったり傷ついたりする原因にもなるため、力の加減と歯茎に当てすぎないように気をつけましょう。

歯と歯の間の隙間が広い方は、フロスよりもご自身の歯茎に合ったサイズの歯間ブラシで、1箇所につき2〜3回軽くこすって清掃するのがおすすめです。矯正治療中でフロスを通しにくい場合は、歯専用の糸通しであるフロススレッダーを使用するのがおすすめです。

フッ素の活用

フッ素が特に効きやすいのは、生えて間もない歯です。生えて間もない歯は未熟な状態ですが、少しずつ成熟していく過程でフッ素を吸収することで歯質が強くなっていきます。歯の生えはじめから、子供用フッ素入り歯磨き粉を使用していただくとよいでしょう。

フッ素は、お子さんから大人の方まで幅広く使用できます。フッ素の効果としては、「虫歯菌の働きを抑制する」「初期虫歯の進行を防ぐ」「歯の質を強化する」ことが挙げられます。この効果は、学術論文でも証明されています。

フッ素は、歯磨き粉や洗口剤にも含有されているため、自宅でも簡単に使用できます。特に歯磨き粉は「高濃度フッ素」と記載されている物を選んでいただくと、より虫歯予防に効果的です。

定期検診

歯磨きだけでのお口の清掃率は約6割くらいで、フロスを併用した場合は8割くらいになります。どれだけ一生懸命に歯磨きを行っても完璧に汚れを落とすことは難しいのです。

そのため、歯科医院で定期検診を受け、定期的な虫歯や歯茎のチェックとクリーニングを受けていただくことをおすすめします。

歯垢や歯石は、歯と歯茎の間にある溝の部分(歯肉溝)に蓄積しやすいのですが、自分では見えづらく気づかないことがほとんどです。

歯科医院では超音波スケーラーなどの専門的な器具でこの歯と歯茎の間の溝まで洗浄し、歯石や歯垢を除去することができます。定期検診に通っていただくと早い段階で虫歯や歯茎の腫れにも気づくことができるため、歯の寿命を長くすることにも繋がります。

まとめ

虫歯がある場合は、基本的に矯正治療を始める前に虫歯治療を行います。条件に合えば、矯正治療と同時進行で虫歯治療を行うこともできます。

まずは、お口の状態を確認してみましょう。その際に、もし虫歯があれば矯正治療を考えていることを事前に伝えていただければ、矯正治療を考慮した虫歯治療計画を考えることが可能です。

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