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インプラント治療で後悔しないために!術前矯正のススメ

監修:歯科医師 高島光洋


手のひらの上に浮かんでいる歯のイラスト

抜歯をした歯に対して「インプラント」という選択肢があることは、最近では知っている方も増えてきました。
では、インプラントは誰にでもできる治療でしょうか。また、できるとすると、どんなことに気を付けたらいいのでしょうか。
インプラント治療を始める前に知っておきたい「術前矯正」のお話をしていきます。

インプラント治療の必要性

様々な理由で抜歯せざるを得ない場合、失った歯の代わりにインプラントをするケースがあります。インプラントは従来からあるブリッジという補綴物と違い様々なメリットがあります。

〇健康な歯を削らずに治療ができる
ブリッジなどの治療では、隣の健康な歯を削る場合が多いのに対して、他の健康な歯を削る必要はありません。

〇物を噛む感覚が自分の歯と近い
チタンという生体になじみやすい金属を人工歯根として骨に埋めるので、人工歯根がしっかり骨とくっつき自分の歯の様に噛むことができます。

〇見た目も綺麗にできる
他の天然歯と同じような綺麗な人工歯を入れることができます。

〇顎の骨が痩せるのを抑える
抜歯をした部分の骨は次第に痩せていきます。インプラントを入れることで骨が痩せていくのを防げます。

インプラント治療でありがちな失敗例

インプラント治療はメリットの裏にデメリットもあります。
「やらなければよかった」と後悔された方のよくあるインプラント「失敗例」を挙げます。

〇インプラントの周りが痛む、しびれる
インプラント治療は外科手術です。術後2~3日は少し腫れますが、次第に落ち着きます。腫れが1週間以上続く場合は細菌感染の恐れがあります。インプラントが神経に当たっているとしびれが起きることがあります。

〇インプラントが動く
インプラントと骨がうまくくっつかない原因は

1、人工歯根を埋める際に骨に大きなダメージがあった
2、インプラントが深かったり浅かったりする
3、歯ぎしりなどによってインプラントが動いてしまう

主にこれらが原因でインプラントが骨に定着しないことがあります。

〇インプラントの周りの歯肉が腫れている
インプラントを入れた後、歯磨きが不十分だとインプラントと歯肉の周りに汚れが溜まり細菌が増え腫れや痛みを引き起こします。

〇インプラントが早くに壊れた
インプラントは下の部分(人工歯根)と上の部分(人工歯)でできています。歯ぎしりや噛む力が強すぎると人工歯が緩んで外れたり、酷い場合は人工歯根が壊れて外さなければならないケースもあります。

インプラント治療がうまくいかない原因 

①もともとのかみ合わせがよくなかった

インプラント治療をした後に噛み合わせが悪くなることがあります。これはインプラント治療をする前から、普段何気なく行なっている

  • 噛み癖
  • 歯ぎしり
  • 頬杖、横向きで寝る

などの悪い癖が原因です。
これらの癖があると、多くの場合、元々噛み合わせや歯並びもよくありません。悪い癖を改善せずにインプラント治療をすると噛み合わせが悪化することがあります。インプラントの歯に強い力がかかり続けると、違和感や痛みが出るなどの症状が出ます。

②歯周病の対策が行き届いていなかった

成人の多くの方が歯周病になっていると言われています。歯周病の治療をきちんと行い、セルフケア・歯科医院でのケアを行わないと悪くなることが多い病気です。
特に、歯並びが悪いと歯磨きがしにくいため汚れが溜まりやすく、歯周病になるリスクは高くなります。
歯周病の管理ができていない状態でインプラント治療を行うと、他の歯はもちろん、インプラントの周りにも汚れが溜まり、細菌が歯肉の中に入り込み炎症を起こしてしまうのです。
これを「インプラント周囲炎」と言います。

治療後に気を付けたいインプラント周囲炎

インプラント治療後に多いトラブルのうち、「インプラントがグラグラする」というものがあります。
それに関連して歯ぐきが腫れる、出血するといった症状は、多くの場合「インプラント周囲炎」が原因です。
骨と歯の根っこの間に歯根膜のある天然の歯と違い、インプラントは骨とインプラント体が直接繋がっている構造のため、天然の歯よりも細菌が入りやすく感染し炎症を起こすことが多くなります。

〈軽度のインプラント周囲炎〉
インプラント周りの歯肉が腫れて出血します。この段階は炎症が骨にまで及ばず痛みなどがないため、自覚症状はほとんどありません。

〈中等度のインプラント周囲炎〉
歯ぐきとインプラントの境目から膿が出てきます。この段階では骨にまで炎症が広がっているため、膿が溜まり歯ぐきから出てきます。

〈重度のインプラント周囲炎〉
膿や出血の他に、インプラントがグラグラして痛みも出てきます。インプラントの周りの骨が溶けてその周りに膿が溜まり、歯ぐきが痩せてくるのでインプラント体が見えてくる場合もあります。
この段階になりさらに悪化すると骨がインプラントを支えられず、やむなく除去する場合があります。

インプラント周囲炎になった場合の治療

インプラント周囲炎にならないためには

〇毎日の歯みがき
〇定期的に歯科医院でチェック


この2つが最も大切です。
しかし、それでもインプラント周囲炎になってしまった場合の治療方法の治療方法をご紹介します。

〈軽度の場合〉
〇歯周ポケットの清掃、洗浄
〇歯石の除去
〇抗生物質で炎症を抑える
〇PMTC(歯のクリーニング)
〇ブラッシング指導

などを行い、インプラントの周りが清潔に保たれるクリーニングや治療を行います。

〈中等度~重度の場合〉
〇プラークや歯石の除去
〇かみ合わせの調整
〇歯肉切開
〇骨移植、骨再生を促す

これらのような外科的な治療が多くなります。インプラントを直接見るために歯茎を切って開きます。膿や細菌を薬剤等でしっかり除去し、骨が少なくなっている場合は、骨の移植、人工骨を入れる治療を行います。

インプラントの失敗を予防できる術前矯正

インプラントを長く保つには汚れをためず清潔にすること大事ですが、元々歯並びやかみ合わせが悪い場合や、顎の位置がズレている場合は、先に歯並びや噛み合わせ、顎の位置を整える矯正治療を行ってインプラントなどの外科手術を行います。
これを「術前矯正」といいます。
術前矯正をしなかった場合、

〇歯周病リスクが高いまま
歯並びが悪いままだとでお口の中に汚れが溜まりやすく、歯周病のリスクが大きいためインプラントを長く保つことができない。

〇痛みや腫れが起こる
噛み合わせが悪いままだと一部の歯に負担がかかり、痛みや腫れが起こることがある。

〇正しく噛み合わない場合がある
元々嚙み合っていない歯がある状態でインプラントをすると噛み合わせのバランスは更に悪くなることがある。

これらのリスクを回避するには「術前矯正」が必要といえます。

術前矯正を行うメリット

〇歯周病を低減できる
歯並びや噛み合わせが改善されると歯磨きがしやすくなり、インプラントの大敵である汚れや細菌をためないようにできます。術前矯正は歯周病を低減する効果が大きい治療と言えます。

〇インプラントが長持ちする土台作り
歯並びや噛み合わせが悪いと一部の歯に偏った力がかかり歯には大きな負担となります。
術前矯正によってお口全体で噛むように改善でき、噛む力のバランスがよくなります。
インプラントの歯にも負担が少なくなるので長く保つことができます。

インプラントの術前矯正の流れ

歯並びのガタガタ具合や骨格などで矯正治療期間は変わりますが、マウスピース矯正のインビザラインで治療ができます。

  1. 口腔内スキャナーで歯列をスキャンして、クリンチェック(治療計画)を作成
  2. マウスピースを装着して矯正治療開始
  3. 1週間程度でマウスピースを交換する(数週間~数ヶ月)
  4. 最後のマウスピースによって矯正治療終了(別に保定期間あり)
  5. インプラント治療へ

ケースによっては矯正治療の途中でインプラント治療を開始する場合もあります。
歯並びや骨の状態など多角的な診断と治療計画によって、術前矯正からインプラント治療へ移行していきます。

インプラントを成功させるために

インプラントを長く持たせるために、また、後悔しないインプラント治療のためには

〇歯並びや噛み合わせを整える「術前矯正」を行う
〇歯磨きなど自宅でのセルフケアを習得する
〇歯科医院での定期検診を欠かさない


これらが大切なポイントになります。
当院では、今回ご紹介した「術前矯正」を推奨しております。
インプラントを検討されている方で「術前矯正」について詳しくお知りになりたい方は、お気軽にお問い合わせ、ご相談ください。

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