悪い歯並びは歯周病を引き起こす⁉その症状とは?
監修:歯科医師 高島光洋
歯茎に違和感がある。歯磨きの時に痛む。でも、日常生活にそんなに支障ないから歯科医院に行くほどでもないか。。。
このような考え方は、歯周病を進行させてしまうかもしれません。なぜなら、歯周病はある程度進行しても痛みが出にくく、日常生活に大きな支障がでるほどの症状がでにくいからです。
今回は、主に「歯周病の原因」・「初期症状の特徴」・「段階的な進行」についてお伝えします。
1.歯周病ってどんな病気?悪い歯並びとの関係とは
・歯周病の直接的な原因は「プラーク」です!
・プラークが付着しやすい原因とは?
2.歯周病の前兆である「歯肉炎」を知りましょう!
3歯周病4つの進行過程。受診はお早めに!
4歯周病予防には矯正治療も効果的です!
歯周病ってどんな病気?悪い歯並びとの関係とは
歯周病とは、歯茎の炎症が進行して、歯の周りの組織まで及び、歯を支えている骨(歯槽骨:しそうこつ)の吸収が確認される状態をいいます。
歯槽骨の吸収が進むと、歯を支えることが難しくなり、やがて歯はグラグラ揺れ、最終的には歯が抜けることもあります。
歯周病は、虫歯と違って痛みを感じにくいため、気づいた時には重度の歯周病になっていることもあります。そのため、歯周病は歯を失う最大の原因としても知られています。
歯周病の直接的な原因は「プラーク」です!
歯周病の直接的な原因は「プラーク(歯垢)」と「歯周病菌」です。プラークは食べかすとは違います。口の中の細菌が、食べかすの成分を餌として増殖し、その代謝産物がプラークとなります。
そのため、プラーク中には多くの種類の細菌が増殖しており、「細菌の塊」とも言われます。もちろん、歯周病菌が増殖する原因になります。
(プラークと食べかすの違いについて)
「プラーク」は食べかすとは違い、白色あるいは黄白色で粘り気があるため、歯磨きでしっかり清掃しなければ落とすことができません。虫歯や歯周病の直接的な原因となります。
一方で、「食べかす」は粘着性がないので、うがいにより、ある程度落とすこともできます。食後に歯磨きできない場合はうがいだけでも行うと良いでしょう。(ただし、うがいではプラークは除去できないため、細菌が増殖しやすい朝と夜の歯磨きは習慣にすることが大切です。)
プラークが付着しやすい原因とは?
歯周病の直接的な原因はプラークです。では、プラークが付着しやすい原因とは何でしょうか?その原因についてご説明します。
①歯石
歯石は、唾液に含まれるカルシウム成分などにより、プラークが石灰化したものです。そのため、プラークのように歯周病の直接的な原因にはなりません。しかし、軽石の様な構造で、表面がザラザラしており内部もスカスカなため、プラークが付着しやすく、内部にも入り込みやすいです。歯周ポケット内にもできることがあります。
歯磨きでは取り除けないので、歯科医院で専用の器具で取ってもらい、歯の表面を綺麗にしてプラークが着きにくい状態にしてもらうと歯周病予防に繋がります。
※市販でも歯石を取るためのスケーラーがありますが、歯石の取り残しや歯や歯茎に傷をつけることもあり危険です。歯石取りには専門的な技術が必要なため、専門家にお任せましょう。
②虫歯
歯と歯茎の間付近に虫歯ができると、歯に穴(齲窩:うか)ができ、プラークが付着しやすくなり、歯周病のリスクを高めます。
虫歯の状態にもよりますが、まずは歯周治療を行い、歯茎の状態が良くなってから、虫歯の治療を行うと綺麗に治りやすく、虫歯の再発も防ぎやすくなります。(虫歯の痛みが強い場合は、虫歯を優先して治療することもあります)
③適合してない詰め物や被せ物
歯と詰め物あるいは被せ物の間に段差があり、歯の形に適合してない場合は、プラークが溜まる原因になることがあります。この場合、少し削って微調整を行ったり、詰め物や被せ物のやり替えが、必要になることもあります。
④口呼吸
口の中が乾燥することで、唾液の循環が悪くなり、自浄作用(じじょうさよう:唾液が口の中を循環することで細菌や食べかす等を洗い流す働き)が低下することで、プラークが付着しやすくなります。治療としては、矯正治療や唇の筋肉を強くするトレーニングを行うこともあります。
⑤歯の形態異常
先天的に歯の形が特異的な形状をしている場合があります。この場合は、定期的なクリーニングで注意深く経過を観察し、歯磨きの指導も行ってご自身でもケアを行えるようにします。改善が見込めない場合は、歯の一部を削って、ケアをしやすいようにします。
特に、口蓋裂溝(こうがいれっこう)、エナメル真珠、エナメル突起は歯周病が進行しやすいこともあります。
⑥歯並び
歯並びにより口呼吸が誘発されたり、歯が重なっていることで、歯磨きがしづらく、プラークが付着しやすくなります。また、歯並びが悪いことで、噛み合せも悪くなり、咀嚼効率が低下します。咀嚼は、唾液の分泌を促進する働きもあります。咀嚼効率が低下すると、唾液の分泌も低下し、自浄作用が低下することで、プラークが溜まりやすくなります。治療としては、矯正治療で改善します。しかし、歯茎の炎症が強い場合は、矯正治療で歯を動かす力が加わると、歯周病を進行させてしまう可能性もあります。そのため、歯周治療により歯茎を改善した後、矯正治療を行うこともあります。
歯周病の前兆である「歯肉炎」を知りましょう!
歯周病になる前に「歯肉炎」にかかります。「歯肉炎」と「歯周病」は炎症が及ぶ範囲に違いがあります。
「歯肉炎」は炎症が歯茎のみに及ぶ状態、「歯周病」は炎症が進行し、歯の周りの組織まで及び、歯を支えている骨(歯槽骨:しそうこつ)の吸収が確認される状態を言います。
「歯周病」の前段階である「歯肉炎」の時に、治療やケアを受けることができれば、完治(元の健康な状態に戻す)することも可能です。では、「歯肉炎」の症状とはどういった症状かをご説明します。
歯肉炎の症状
●歯磨き時に歯ブラシに血がつく
●歯磨き時に歯茎が痛む
●歯茎の色が薄ピンクではなく、赤みが強い
●歯と歯の間の歯茎が丸みを帯びている
●歯茎に腫れが見られる
この様な症状がある場合は、歯科医院を受診されることをおすすめします。
歯肉炎から歯周病に進行し、歯の周りの組織に炎症が及び吸収されることで、組織を失ってしまうと、元の状態に戻すことは難しいです。しかし、治療により炎症の広がりを抑えることはできます。歯周病治療を早めにスタートできれば、ご自身の歯を残せる可能性が高まります。
歯周病4つの進行過程。受診はお早めに!
歯周病の罹患率は、30代以降から高くなる傾向にあります。40代以降からは、虫歯をさしおいて「歯を失う原因」第1位でもあります。50代以降には、平均で2年に1歯の割合で、歯周病により歯が失われているのが現状です。歯周病は段階的に進行していきます。その症状の変化をご説明します。
(それぞれの段階に歯周病検査値(プロービング値)を載せております。歯周病検査値とは、歯科医院でプローブと呼ばれる細い器具を使用し、歯周ポケットの深さを測る検査です。歯科医院で検査をしてもらった時のご参考にしてください。)
〇ステージ0:正常な歯茎(歯周病検査値:1〜3mm)
・淡いピンク色
・出血がない
・歯と歯の間の歯茎が三角形になっており、先端が尖った形をしている
・歯茎が引き締まっている
〇ステージ1:歯肉炎(歯周病検査値:4mm)
・炎症は歯茎のみで、周りの組織には炎症が広がっていない。
・歯茎の辺縁が赤くなり、腫れる
・歯と歯茎の間の歯茎は三角形の先端が丸っぽくなり腫れる
・歯茎に触れると出血する
〇ステージ2:軽度の歯周病(歯周病検査値:4mm)
・歯肉炎の症状に加えて痛みが強くなる。
・歯茎がイジイジする(痒みのような違和感)
・歯が浮いた感じがする
歯肉炎や軽度の歯周病であれば、元の健康な状態に治すことも可能です。小さな違和感や痛みでも継続して起こる場合は歯科医院で診てもらいましょう。
〇ステージ3:中等度の歯周病(歯周病検査値:5〜6mm)
・歯茎の炎症が強くなりブヨブヨする
・歯茎が下がる
・歯の根っこが見えてくる
・膿が出てくることもある
・歯がグラグラ揺れることもある
・歯を支えている骨(歯槽骨)の吸収がみられる
・歯と歯の間に物が挟まりやすい
・口臭や口の中の粘つきを感じる
・歯磨き時の痛みが強く、歯磨きしづらくなる
・歯がしみる
中等度の歯周病でも、生活に支障の出る程の痛みや違和感は現れにくいのが現状です。我慢できない位の痛みが出てから歯科医院に行かれる方は要注意です。
〇ステージ4:重度の歯周病(歯周病検査値:7mm以上)
・中等度の歯周病の症状が更に強くなります。
・歯の揺れ、口臭、粘つきが強くなる
・歯の揺れが強くなることでかみ合わせも悪くなる
・咀嚼しづらくなる
・骨格が変化し顔つきの変化もみられる
・発音や滑舌が悪くなる
・歯を支えている骨が少なくなり、自然と歯が抜け落ちることもある
歯がグラグラ揺れると、歯並びも変化します。その変化によってかみ合わせも変わるので、歯が欠けたり割れることもあります。
歯周病予防には矯正治療も効果的です!
矯正治療は見た目を綺麗にするだけではありません。咀嚼機能や発音機能を改善することも可能です。また、歯の重なりや傾きが改善されることにより、歯磨きもしやすくなり、虫歯予防や歯周病予防の効果も期待できます。
現在では、目立ちにくい透明なマウスピース型の矯正装置もあります。中でも、インビザラインは、アメリカのアライン・テクノロジー社が開発し、世界で1500万人以上の方が治療を受けられている実績のある矯正治療装置です。日本やヨーロッパでも主流になっています。
インビザラインの特徴
○目立ちにくい
透明なマウスピース型の矯正装置のため、目立ちにくいです。
○比較的痛みが少ない
ワイヤー矯正に比べ、歯を移動する力が弱めで痛みが少ないです(ただし、自宅でマウスピースを交換することで矯正治療を進められるため、ワイヤー矯正と治療期間はほとんど変わりません)。また、金属の装置を装着しないので口の中に傷ができにくいです。
○取り外し可能
装置を取り外すことができるので、食事や歯磨きは普段通り行えます。
○金属アレルギーの方にも適応できる
マウスピース型の矯正装置は樹脂素材(プラスチック)で作製されているため、金属アレルギーの方にも適応できます。
○比較的通院回数が少ない
インビザラインの通院目安は1〜3ヶ月に1回です。自宅で1〜2週間ごとにマウスピース矯正装置を交換しながら治療を進めます。そのため、ワイヤー矯正に比べて通院回数が少ないです。
歯磨きを頑張っても歯茎の腫れがなかなか治らない、歯茎に違和感を感じる、歯並びが気になる、お口の中で気になることがあれば当院へご連絡ください。小さな違和感においても診察させていただきます。特に歯周病は痛みを感じにくい疾患になりますので、定期的な歯科健診もおすすめしております。