子供の矯正治療は医療費控除の適用?適用可能な症例と還付金について
監修:歯科医師 高島光洋
医療費控除とは、その年の1月1日~12月31日の間に支払った医療費に対して受けられる所得控除のことを言います。つまり、年間の医療費の額が一定額を超える場合に申請すれば、税金で支払った一部が手元に還ってくるという仕組みです。
本人あるいは本人と生計が一緒(同一生計)である配偶者やそれ以外の親族に必要な医療費を支払った場合、その支払った医療費が定められた金額を超えた額が対象となります。同居は条件ではないため、単身赴任や1人暮らしの学生の方でも一緒に申請することが可能です。
会社員の方でも確定申告を行えば、納めた税金(所得税)の一部が還ってくるという仕組みです。ということは所得税の支払いが減るため、住民税にも反映され住民税の支払いも少なくなります。そのため節税効果が高まります。
医療費控除には、医療機関での領収書の保管(5年間)が必要になるので、大切に保管しておきましょう。(紛失した場合、医療機関によっては再発行ができないところもあります)
まずは、医療費控除の「手続きの仕方」・「対象となる医療行為」・「返金される金額」についてご説明します。
1.子供の矯正治療は医療費控除が適用されやすいです!
1-1子供の矯正治療における具体的な適応症例
1-2子供の矯正治療で医療費控除が適用されない症例とは?
2.医療費控除が適用される費用とされない費用
3.医療費控除額と戻ってくる金額の計算方法
3-1具体的なケース
3-2簡単おすすめ!医療費控除の計算サイト
3-3分割払い「デンタルローン」「院内分割」について
4.医療費控除申請にお困りの方へ無料サポートも実施中です!
子供の矯正治療は医療費控除が適用されやすいです!
歯科矯正治療の目的は、主に2種類あります。「治療」を目的にするか、見た目を改善する「審美」を目的にするかです。
この目的が、医療費控除を受けられるかどうかの基準になります。「審美」が目的となる場合、病気やケガのない健康な体に施術を行うことになるため、社会保障制度の1つである医療費控除としては認められません。
矯正歯科治療も「審美」が目的となるイメージが強いかもしれませんが、お子さんが歯科矯正治療を受ける場合は、「治療」が目的となるケースが多いです。
その理由は、成長過程にある子供の悪い歯並び(不正咬合)を治すことで、子供の成長を妨げる要因を改善する治療効果もあるからです。そのため、基本的には子供の矯正治療は医療費控除の対象になります。
対象となる方は、歯科医師が発行する診断書が必要になることもあります(有料)。
確定申告を行う時に、診断書とともに提出すれば医療費控除として受理されます。
※医療費控除の申請に診断書が必要無い場合もあるため、確認してから発行してもらいましょう。
子供の矯正治療における具体的な適応症例
対象は、「悪い歯並びにより成長が妨げられると考えられ、歯科矯正治療の必要性がある」と診断された方です。具体的には、以下の症例が挙げられます。
- 噛み合せのズレが生じている
- うまく咀嚼できない
- 発音が聞き取りにくい
このような症状がある方は、医療費控除の対象になりやすいです。
※医療費控除は健康上の理由がある場合に限り適用になります。注意するポイントは、子供であっても「審美」(見た目)が目的になる場合は医療費控除の対象にはなりません。
子供の矯正治療で医療費控除が適用されない症例とは?
子供の矯正治療において、医療費控除の対象になる年齢は厳密には決められていません。
しかし、適用となるケースが多いのは中学生くらいまでです。
高校生くらいになると、基本的には歯の生え換わりが完了し、顎の成長も落ちつきます。矯正治療の方法も大人の矯正治療と同じ扱いになります。
そのため、顎の成長を正常に促すための「治療」目的というよりは、見た目を改善する「審美」目的の矯正治療になりやすいと考えられます。「審美」目的の矯正治療の場合は、医療費控除の対象外になります。
大人の矯正治療においても、「出っ歯の症状が強くてうまく噛み切れない」「不正咬合が原因で発音がうまくできない」などの場合には医療費控除が適用されることがあります。
歯の生え換わりや成長の速度、歯並びに関しては大きな個人差があるので、まずは事前に歯科医院で診てもらいましょう。医療費控除の適用について、より具体的に知りたい場合は、指定の税務署へ確認いただくと良いでしょう。
医療費控除が適用される費用とされない費用
治療に関わる費用は、基本的に医療費控除の適用になります。しかし、医療費控除が適用されない費用もあるので申請の際は要注意です。
◎医療費控除が適用となる医療費
・診断費用・診察費用
・検査費用(治療に必要なレントゲンやCT撮影)
・矯正装置費用
・矯正処置・調整費用
・治療の際に処方された医薬品の費用
・公共交通機関を利用した交通費(付き添われる方の交通費も含まれます。公共交通機関の利用が難しい方はタクシーの利用料金が認められることもあります)
※デンタルローンやクレジットカードでの分割払いでも医療費控除の対象になります。しかし、その際にかかる手数料や利息は医療費控除の適用外になります。
◎医療費控除が適用にならない医療費
・自家用車で通院した際のガソリン代・駐車場代
・デンタルローンやクレジットカードでの分割払の手数料や利息
・予防に必要な口腔ケア用品(歯ブラシ、歯磨き粉など)
・診断書(申請に必要ない場合は発行してもらう必要もありません)
支払いが未納のままだったり、年をはさんでしまうと支払った年の医療費となってしまうので、医療費の支払いの時期には注意しましょう。年間最大200万円までの医療費なら医療費控除が適用されるので、その年の間に支払いを済ませられると良いでしょう。
医療費控除額と戻ってくる金額の計算方法
医療費控除により控除を受けられる金額を知るには、決まった計算式で算出する必要があります。
①医療費控除額の算出方法
(a) 控除の対象となる医療費の合計額ー(b)保険金などで補填される金額ー(c)10万円=医療費控除額
(a):1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費のうち、医療費控除が適用される医療費の合計を計算します。限度額は200万円です。
健康保険組合によっては1年分の医療費をまとめた「医療費通知」が発行されることもあります。その場合は、医療費通知に記載されている金額を明細書に記入します。
(b):「生命保険・損害保険から支払われる保険金や給付金」「社会保険から支払われる給付金(高額療養費など)」が該当します。
(c):医療費控除を申請する年の総所得が200万円未満の場合は、差し引かれる金額は総所得金額の5%分のみになります。
②還付金の算出方法
所得税率の確認が必要になります。所得税率は、所得によって決められます。次の表をご確認ください。
具体的なケース
【ケース1】
Aさん家族の総所得が夫400万、妻200万の合計600万。1年間で支払った医療費(治療や通院費)が50万円、保険(生命保険や健康保険など)の補填額5万円の場合に、手元に戻ってくる金額を計算します。
①医療費控除額の算出
(a)50万円ー(b)5万円ー(c)10万円=35万円
②Aさん家族の総所得は600万円のため、所得税率20%となります。
③還付金の算出(手元に還ってくる金額)
35万円×20%=7万円
7万円が還付金となります。
【ケース2】
Bさん家族の総所得が180万。1年間で支払った医療費(治療や通院費)が15万円、保険(生命保険や健康保険など)の補填額3万円の場合に、手元に戻ってくる金額を計算します。
①医療費控除額の算出
※総所得が200万円未満のため、医療費から引く額は総所得の5%分になります。
180万円×5%=9万円
(a)15万円ー(b)3万円ー(c)9万円=3万円
②Bさん家族の総所得は180万円のため、所得税率5%となります。
③還付金の算出(手元に還ってくる金額)
3万円×5%=1500円
1500円が還付金となります。
簡単おすすめ!医療費控除の計算サイト
入力に必要なことを事前に確認しておけばスムーズに医療費控除の還付金が算出できます。計算サイトを使用する前に事前に確認しておくことは、同一生計での「総所得」「1年間分の医療費(医療費控除が適用される金額)」「保険金などで補填される金額」です。この金額を計算サイトに入力すれば、医療費控除の還付金の目安が算出できます。
<おすすめの計算サイト>
・医療費控除簡易計算(https://www.hahoo.jp/KEISANKI/
・医療費控除による税還付 - 自動計算サイト (calculator.jp)
(利用上の注意点)
計算サイトは簡易的に医療費控除額や還付金を算出する1つの目安としてご使用ください。医療費控除以外の控除額は含まれないため、本来の還付金額と異なる場合があります。医療費控除の詳細については税務署にお問い合わせください。
分割払い「デンタルローン」「院内分割」について
矯正治療の金額は高額になりやすいです。そのため、治療費の支払いに分割払いを利用される方も多くいらっしゃいます。歯科治療での分割払いの種類には「デンタルローン」と「院内分割」があります。
デンタルローン | 院内分割 | |
金利 | 2.5~8% | 利子がない場合が多い |
支払期間 | 7~15年(分割回数84~180回) | 治療期間内 |
審査 | 必要 | 不要な場合が多い |
院内分割は金利がかからないため、デンタルローンよりお得に感じます。しかし、デンタルローンは全額が契約を行った年の医療費の支払いとして認められるため、その年の医療費控除として認められ節税効果が高いです。
分割回数を多く設定することも可能なため月々の支払いを低い額にされたい方にもおすすめです。
逆に、院内分割の支払いは治療期間内であることが多く、2年間契約だと医療費控除の申請は1年間ずつ別々で行うことになるので節税効果が低くなります。
分割回数の違いなどによっても金額が変わってくるので、まずは事前に医療費控除も考慮して実質的な支払金額を計算してから支払い方法を決めるのがおすすめです。
医療費控除申請にお困りの方へ無料サポートも実施中です!
医療費控除申請の流れについてご説明します。
①医療費控除に必要な書類を揃える
・医療費支払いを証明する書類(レシートあるいは領収書)
提出は必要ありませんが、医療費控除の明細書に支払った医療費を記入する時に必要になります。領収書以外にも1年間の医療費支払いの記録がまとめられた「医療費通知書」があると医療費控除の明細書の記入がスムーズです。
・医療費控除の明細書
・源泉徴収票
・確定申告書A
・マイナンバーカード等の本人確認書類
②必要書類に記入する(確定申告書A・医療費控除の明細書)
③提出書類を指定の税務署に提出する
(e-Taxを使用してパソコンからデータを送信する方法もあります)
④1ヶ月~1ヶ月半くらいで指定口座に還付金が振り込まれます
当院では医療費控除の無料サポートも行っております。矯正治療をお考えの方は、医療費控除についてもご相談ください。