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歯周病は矯正治療に影響する?両治療の関係について

監修:歯科医師 高島光洋


歯科治療中の口元

「歯周病があると矯正治療はできないの?」と心配になられる方もいらっしゃるでしょう。実際、矯正治療ができるかどうかは、歯周病の程度によって変わります。軽度~中等度の場合は矯正治療を受けられる可能性があり、重度の場合は矯正治療が難しいことがあります。
今回は、「歯を失う原因第1位である歯周病とは?」「矯正治療が可能な歯周病の程度とは?」「歯周病治療完了後の矯正治療のタイミング」などについて解説します。ぜひ、ご参考になさってください!

歯を失う原因第1位である歯周病とは?

歯周病は、細菌感染によって引き起こされる感染症です。原因となる細菌のほとんどは、歯に付着したプラーク(歯垢)に存在します。プラーク1g中には最大1000億個もの細菌が存在しており、それらの細菌が歯茎に感染し炎症を引き起こすことで歯肉炎を発症し、進行すると歯周病を発症します。
歯肉炎の段階では歯茎だけに炎症を伴いますが、進行して歯周病になると、歯を支えている骨(歯槽骨)にまで炎症が及びます。そして、さらに悪化すると、歯槽骨が吸収されることで骨量が減少してしまい、支えを失った歯が抜け落ちてしまうことがあります。

歯周病は、日本において歯を失う原因第1位と報告されています。

  • 10代~20代前半:約20%
  • 20代後半~30代前半:約30%
  • 30代後半~40代前半:約40%
  • 40代後半~50代前半:50%
  • 50代後半以降は55~60%

と、歯周病の発症率は半数以上となるデータも報告されています。
大きな痛みなどの症状が出にくいため、気づかないうちに進行してしまっているケースが多いです。

歯周病になる最大の原因は「プラーク」

先述したとおり、歯周病の最大の原因は、プラーク内に潜む細菌です。歯と歯茎の間には、小さな溝(歯肉溝)があります。炎症が起きると歯茎が腫れてその溝が深くなり、歯周ポケットを形成します。歯周ポケット内では細菌が増殖しやすく、さらに内部の歯槽骨にまで炎症が広がります。炎症により歯槽骨が吸収し徐々に減ることで歯を支えきれなくなり、歯のグラつきや出血、排膿が起こるなど、歯周病が重症化します。

そのため、歯周病予防には、毎日の正しいケアでお口の中のプラークを減らすことが大切です。

矯正治療は歯周病予防効果も期待できる!

矯正治療で歯並びを改善することは、歯周病予防にも繋がります。なぜかというと、歯並びが改善すると、歯磨きがしやすくなって磨き残しが減るため、歯周病の原因となるプラークが蓄積しにくくなるからです。
また、歯並びが悪いことで咬み合わせのバランスが偏っていると、咬む力も一部の歯に偏って過剰な負担がかかってしまいます。このような大きな負担が歯にかかると、歯自体はもちろん歯の周りの組織にダメージを与えてしまい、歯周病が進行しやすくなります。そのため、矯正治療で歯並びを改善し、咬み合わせのバランスを良くすることも歯周病予防に繋がります。

矯正治療が可能な歯周病の程度とは?

軽度~中等度の状態であれば矯正治療を受けられるケースがほとんどですが、重度の状態だと矯正治療が難しい場合もあります。
矯正治療は、歯に矯正力をかけて、歯の周りにある組織(歯周組織)のひとつである歯根膜を引っ張ったり押したりして歯を動かします。そのため、矯正治療を受けることで歯周病が悪化するリスクもあります。しかし、歯周病治療を併用することで矯正治療を行えるケースもあります。

【軽度の状態】

  • 歯周ポケットの深さ3㎜以下
  • 歯茎が赤くプクッと腫れている
  • 出血がする場合もある
  • 炎症は歯茎のみで歯槽骨には広がっていない

▶歯周病治療を受けながら矯正治療を進めます。

【中等度の状態】

  • 歯周ポケット深さ4~6mm
  • 歯槽骨まで炎症が広がっている
  • 歯茎が下がる
  • 出血がある
  • 口臭の悪化

▶歯周病治療を優先して行い、歯茎や骨への炎症改善が確認されてから矯正治療を進めます。

【重度の状態】

  • 歯周ポケット深さ7㎜以上
  • 歯の根っこの露出
  • 歯のグラつき
  • 口臭の悪化
  • 排膿・出血がみられる
  • 歯槽骨まで炎症が広がっている

▶矯正治療により症状が悪化することがあるため、治療できないことがあります。抜歯と診断されることもあります。しかし、歯周外科治療などを行って症状が改善すれば矯正治療を行える場合もあります。

歯周病治療ってどんな治療?

歯周病の改善に欠かせない「プラーク除去」には、自分で毎日継続して行う「セルフケア」と、定期的に歯科医院で受ける「プロフェッショナルケア」、両方が大切です。
また、重度の歯周病では、歯周外科治療や抜歯が必要になることがあります。

基本的な歯周病治療について

歯肉炎や軽度~中等度の歯周病では、歯周ポケットの洗浄や、歯石や歯垢除去を行います。

〇歯周ポケット洗浄
歯茎が炎症を起こして腫れると、歯と歯茎の間の溝が深くなり歯周ポケットを形成します。
歯周ポケット内部は、超音波スケーラーという器具を使用して洗浄します。それによって蓄積したプラークを除去し、歯周病菌を激減させることができます。

〇歯石除去
歯石とは、プラークがカルシウム成分などを吸収し、石灰化して硬くなったもののことです。
一度歯石になると自分では除去できず、歯科医院でのケアが必要です。
表面についている比較的小さいものであれば、超音波スケーラーという機器で除去できますが、歯周ポケット深くに形成されているものに関しては手動で除去します。
歯石の表面はざらざらしていてプラークが付着しやすいため、放置するとさらに細菌が増加して歯周病が進行しやすいです。

〇毎日の歯磨き
歯周病治療の効果をできるだけ長く持続するためには、毎日正しく歯磨きを行い、できるだけ磨き残しのない状態にすることが大切です。
磨き残しが多い部位や炎症が強い部位などをお伝えして、正しくセルフケアできるようにアドバイスさせていただきます。

<正しい歯磨きのやり方>

①毛先を当てる
毛先が立つように歯面に当てましょう。強く押し当てると毛先が広がってうまく洗浄効果が得られません。

②力を入れすぎない
力を入れすぎるとうまく磨けないだけではなく、歯や歯茎を傷つけてしまうことがあります。ゴシゴシ磨くのではなく、シャカシャカ軽やかな音がする程度の力加減で磨くようにしましょう。

③小刻みに動かす
2歯ずつくらいの間隔で小刻みに動かすと、歯と歯の間の隙間にも歯ブラシの毛先が入りやすくプラークが落ちやすいです。

④1カ所につき10回以上磨く
プラークは少し粘性があるため、2~3回磨いてもキレイに除去できません。1カ所につき10回は歯ブラシを動かすようにしましょう。
また、1日1回は5分以上かけて丁寧に磨くのがおすすめです。

⑤フロスを使用する
歯と歯の間は、歯磨きだけでは汚れがとりきれないことがあります。そのような場合はフロスを使用するのがおすすめです。
歯と歯の隙間が開いている方は、歯間ブラシを使用しましょう。歯間ブラシは、ご自身の歯の隙間の大きさに合っていないと効果が得られないため、歯科医院で相談することをおすすめします。

重度だと歯周外科治療や抜歯を行うことも…

基本的な歯周病治療を行っても症状が改善しない重度の症状の場合には、より専門的な歯周病治療「歯周外科治療」を行うこともあります。
歯周外科治療の方法は主に4つで、保存が難しい歯に対しては抜歯することがあります。

フラップ手術(歯肉剥離層掻把術)

〇治療内容
歯肉を切開して直接歯根の歯石や細菌を取り除き、徹底的に感染組織を除去します。

〇適応症例
歯周ポケットが深くなっており、通常の治療ではスケーラーなどの器具が到達できないケース

歯周再生療法

〇治療内容
歯茎切開と感染組織除去後、医療用の骨材やメンブレンと呼ばれる骨の再生を促す吸収性の人工膜を使用して、歯周組織を再生します。

〇適応症例
明らかな骨欠損が認められるケース

歯肉切除術

〇治療内容
歯周病により肥厚・増殖した歯茎を切除し、深くなった歯周ポケットを浅くします。物理的に歯周ポケットを浅くすることで、ケアを行いやすくします。

〇適応症例
歯茎が肥厚し・増殖しているケース歯周ポケットが4~6mmくらいの比較的浅いケース

歯肉移植術

〇治療内容
健康な歯茎を切り取って、歯肉が下がっている部分に移植します。知覚過敏、歯根面の虫歯の予防にも効果的です。

〇適応症例
歯周病などで歯茎が下がったケース

抜歯

歯周病が重度で保存が難しい歯に対しては、抜歯になることもあります。抜歯を行ったあとは、新たに人工歯を装着することで、歯の機能を補うことができます。
人工歯には、インプラント、ブリッジ、入れ歯があり、歯科医院でそれぞれのメリットやデメリットなどの説明を受け、ご自身に合ったものを選んでいただきます。

歯周病治療完了後の矯正治療のタイミングについて

炎症が改善されてない状態で矯正治療を行うと、歯周病が悪化します。そのため、矯正治療は、歯周病治療が完了し、歯周組織が改善された状態が維持されるようになってから行います。

歯周病治療完了の数週間後に必ず歯茎の検査を行い、歯周組織が改善しているか確認します。その結果をもとに、矯正治療を開始するかどうかを判断します。
歯茎の状態は個人差があるため、歯周病治療がどのくらいかかりそうか、矯正治療はいつ頃からはじめられそうかなどについては、担当の歯科医師や歯科衛生士に確認しましょう。

歯周病は再発しやすいです。そのため、毎日、自分でお口のケアを行い、定期的なクリーニングを受けることが、健康な歯茎の維持には欠かせません。

矯正治療中に歯周病になる可能性があります!

矯正治療中に装置のケアがうまくできていなかったり、定期的なクリーニングを受けていなかったり、食生活が変化したりすることで、歯周病にかかってしまうことがあります。

◆ワイヤー矯正装置をうまく磨けていない
ワイヤー矯正は、歯に直接装置を装着するため、歯磨きがしにくくなります。タフトブラシや歯間ブラシも併用すると、磨き残しを少なくすることができます。


◆マウスピース型矯正装置のケアが不十分
食後そのままマウスピースを装着したり、マウスピースの洗浄が不十分だと、プラークが蓄積しやすくなるため、歯周病リスクを高めてしまいます。

◆軟らかい物が多い食事になりやすい
特にワイヤー矯正は装置が固定されているため、食事をしにくく感じることがあります。そのため、食事の際に軟らかいものを選んでしまいやすいです。

◆定期的にクリーニングを受けていない
矯正治療で歯科に通っていても、つい、定期的なクリーニングをおろそかにしてしまうことがあります。ご自宅での毎日の歯磨きでは除去できない汚れや細菌があるため、専門家によるクリーニングで除去することが、歯周病予防では大切です。

矯正治療中に歯周病を予防する3つのポイント

矯正中に歯周病を予防する3つのポイントについてご説明します。

①正しくお口や装置のケアを行う

矯正中は、お口の中のプラークをなるべく減らすことが大切です。歯だけでなく、装置もキレイに保つことを意識しましょう。
歯ブラシは毛先が装置にも当たるようにシャカシャカ音がなるくらいの力加減で、小刻みに動かしましょう。
マウスピース型矯正装置は、しつこい汚れがついてきたら、マウスピース専用の洗浄液に漬け置きすることでキレイにすることができます。日常では、装置を中性洗剤などを使用してブラシで磨くとよいです。
ただし、マウスピース型矯正装置には歯磨き粉は使用しないようにしましょう(歯磨き粉に含まれる研磨成分により傷つくことがあります)。

補助清掃用具を併用して行う

補助清掃用具とは、デンタルフロスやワンタフトブラシ、歯間ブラシなどのことを言います。
ワイヤー矯正の場合、フロスは通らないので、ワンタフトブラシや歯間ブラシを使用するのがおすすめです。
マウスピース矯正の場合は、フロスを使用して歯と歯の間の磨き残しを減らすようにしましょう。

ある研究では、歯ブラシのみのケアで落とせる汚れはお口全体の6割程度で、清掃補助用具を併用すると9割ほどまで除去可能であることが報告されています。
特に矯正治療中は、清掃補助用具を使用されることをおすすめします。

定期健診を受診する

歯石や歯周ポケット内のプラーク・細菌など、ご自身では取りきれない汚れは、定期的なクリーニングを受けることで激減させることができます。
磨き残しができやすいところも教えてもらえるので、患者さんに合った歯磨き方法も知ることができます。
また、お口の中の歯茎のチェックや虫歯のチェックを受けることで、お口の疾患の早期発見が可能です。

歯周病の方は、お口のケアが行いやすいインビザラインがおすすめ!

歯周病にかかっていると、矯正治療はすぐにスタートできません。軽度~中等度の状態なら、歯周病治療で症状の改善後に矯正治療を行うことができます。重度の場合は矯正治療が難しいことがあります。
矯正治療を考えられている方は、まずご自身のお口の状態を把握するために歯科医院で診てもらいましょう。

歯周病は、症状が改善しても、お口のケアがうまくできていないと再発しやすい疾患でもあります。そのため、矯正治療を受ける際は、お口のケアを通常通り行えるマウスピース矯正がおすすめです。マウスピース型矯正装置を使用するので、装置の取り外しが可能で、通常通り歯磨きや食事ができます。そのため、装置が固定式の方法に比べると歯周病や虫歯になるリスクが低いです。

マウスピース矯正の中でもおすすめなのが、世界シェアナンバーワンの「インビザライン」です。

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