子どもの前歯が生えてこない時にやるべきこととは?放置のリスクと対処法を解説
監修:歯科医師 高島光洋
「乳歯が抜けたのになかなか前歯が生えてこない…」
お子様の歯が生え変わり始めた時に、そんな不安を抱える親御さんは少なくありません。
歯の生え変わりのスピードには個人差がありますが、場合によっては専門的な処置が必要なケースもあるため、注意が必要です。
今回は、前歯が生えてこない原因と放置のリスク、適切な対処法について詳しく解説します。
1.子どもの前歯が生えてこない主な原因
1-1 1.スペースが足りない
1-2 2.永久歯がもともと存在しない「先天性欠損」
1-3 3.「過剰歯」が邪魔をしている
1-4 4.乳歯が早く抜けてしまった
1-5 5.歯茎が分厚い
2.「いつか生えるだろう」と放置することのリスク
2-1 歯並びの悪化
2-2 発音障害や咀嚼能力の低下
2-3 コンプレックスなど心理的影響
3.歯科医院での診断方法と受診のタイミング
4.前歯の萌出を助ける主な対処法
4-1 1.過剰歯の抜歯
4-2 2.窓開け(開窓術)と牽引
4-3 3. 矯正治療(インビザライン)
5.生え変わりが遅いと感じたら、早めの受診を
子どもの前歯が生えてこない主な原因
乳歯から永久歯への生え変わりは、一般的に6歳頃から始まります。時期や順番には個人差があるため、「何歳になったらこの歯が絶対に生えてくる」というわけではありません。しかし、明らかに左右で生える時期がズレていたり、乳歯が抜けてから長期間変化がなかったりする場合には、成長のスピード以外の原因が疑われます。
1.スペースが足りない
現代は、食生活の変化により、顎が十分に発達しにくい子どもが増えています。
また、永久歯は乳歯に比べてひと回りサイズが大きく、綺麗に並ぶためにはスペースが必要です。
顎が健やかに成長すれば、永久歯が生えてくるためのスペースを十分確保できます。しかし、顎の発達が未熟な場合は、すべての永久歯が生えてくるにはスペースが足りず、出口を失った歯が骨の中に埋まったままになってしまうことがあります。
2.永久歯がもともと存在しない「先天性欠損」
歯が生えてこない原因のひとつに、「永久歯の芽(歯胚)」が最初から作られていない「先天性欠損(せんてんせいけっそん)」というケースがあります。
後継する永久歯が存在しないため、乳歯がいつまでも抜けずに残ったり、もし抜けてしまっても新しい歯が生えてきたりすることはありません。
日本小児歯科学会が全国規模で行った調査によると、約10人に1人の割合で永久歯が足りない子どもがいることが報告されています。
3.「過剰歯」が邪魔をしている
通常、永久歯の本数は28~32本(親知らずを含む)で、それよりも多く存在している歯のことを「過剰歯」と呼びます。
この余分な歯が萌出予定の永久歯のすぐそばにあると、永久歯の進路をブロックしたり、根っこの向きを変えてしまったりして、永久歯がスムーズに出てこられなくなることがあります。
過剰歯は、上の前歯付近に存在することが多いです。
また、過剰歯は逆向きに埋まっていることも多く、その場合は、自然に生えてくることはほとんどありません。
4.乳歯が早く抜けてしまった
乳歯が早くに抜けると、空いたスペースに向かって、隣接する歯が傾斜したり移動したりします。それによって、 永久歯が生えるためのスペースが狭まり、正しい位置に生えてこられなくなることがあります。
萌出できない永久歯は、本来の位置からずれて生えたり、埋まったままになってしまったりします。
なお、こうした乳歯の早期脱落の原因は、大きな虫歯や外傷など様々です。
5.歯茎が分厚い
永久歯は通常、歯肉を押し破って生えてきます。しかし、稀に、歯肉が非常に分厚いことで、歯が生える力を跳ね返してしまい、永久歯が生えてこられないことがあります。
この状態を放置すると、永久歯の傾斜や埋伏などのリスクが高まります。
「いつか生えるだろう」と放置することのリスク
「成長とともに生えてくるだろう」と様子を見守ることも大切ですが、適切な時期を逃すと、治療が複雑化してお子さまへの負担が増大する恐れがあります。
前歯が生えてこない状態が続くことで生じる具体的なリスクについて解説します。
歯並びの悪化
前歯が生えてこないまま時間が経過すると、両隣の歯が空いているスペースに向かって倒れ込んだり(傾斜)、咬み合う歯が延びてきたり(挺出・ていしゅつ)します。
これらは、歯並びの乱れや咬み合わせの不具合などを引き起こします。
発音障害や咀嚼能力の低下
前歯は「サ行」や「タ行」などの発音において、舌を当てる重要な役割を担っています。しかし、歯が生えてこず隙間があると、空気が漏れて滑舌が悪くなることがあります。
また、前歯で食べ物を咬み切ることが難しくなり、しっかり咀嚼せずに飲み込むことによって消化器官への影響も懸念されます。
コンプレックスなど心理的影響
学童期は周囲との見た目の違いに敏感になり始める時期です。前歯がないことがコンプレックスとなり、人前で笑うのをためらったり、内向的な性格に繋がったりすることもあります。精神的な健康を守るためにも、早期の改善が望まれます。
歯科医院での診断方法と受診のタイミング
ひとつの目安として、乳歯が抜けて「6ヶ月以上」経過しても生えてこない場合は、歯科医院を受診して原因を確認するようにしましょう。
歯科医院では、目視だけでなく以下のような検査を行います。
◎パノラマレントゲン撮影
顎全体の骨の状態を確認するためのレントゲン撮影です。永久歯が何本あるか、どの位置で止まっているか、過剰歯が隠れていないか、などを一目で確認できます。
◎歯科用CT(3次元画像診断)
レントゲンだけでは正確な位置が特定できない場合、CT撮影を行います。歯の傾きや奥行き、周囲の神経との距離を3次元で把握することで、安全な誘導計画を立てることが可能です。
前歯の萌出を助ける主な対処法
原因が「歯の通り道が塞がっていること」や「歯が深い場所にあること」である場合、単に待つだけでは解決しないため、歯科医院にて処置が必要です。まずは物理的な障害を取り除き、その後に歯を正しい位置へ誘導する流れが一般的です。
1.過剰歯の抜歯
レントゲン検査で永久歯の萌出を妨げている過剰歯が見つかった場合は、これを取り除く処置が必要です。適切なタイミングで抜歯を行うことで、永久歯が自力で生えてくるための「通り道」を確保します。抜歯自体は小手術となりますが、お子さまの負担を考慮し、局所麻酔などを用いて短時間で行われるのが一般的です。
2.窓開け(開窓術)と牽引
歯が歯肉の深い位置にあったり、歯肉自体が非常に厚くなっていて自力で突き抜けられなかったりする場合は、開窓術(かいそうじゅつ)を行います。
これは、埋まっている歯を覆っている歯肉や骨を少しだけ開けて、歯の頭(歯冠)を露出させる処置です。ただ窓を開けるだけでは再び閉じてしまうこともあるため、お口の中の状態によっては、露出した歯に「ボタン」のような小さな装置を貼り付け、そこから細いチェーンやゴムを使って正しい位置へ導く「牽引(けんいん)」が必要です。
3.矯正治療(インビザライン)
顎が小さくて永久歯が並ぶスペースが不足している場合は、矯正治療で顎の横幅を適切に広げつつ、歯を理想的な位置へと誘導することが必要です。
治療方法のひとつであるマウスピース矯正「インビザライン」には、以下のメリットがあります。
- 痛みが少ない:弱い力で持続的に歯を動かすため、牽引後のデリケートな歯にも負担が少ない。
- 清潔に保てる:装置を取り外して歯磨きができるため、生え変わり時期の複雑な歯並びでも虫歯を予防しやすい。
- 活動を制限しない:金属の突起がないため、スポーツや吹奏楽、食事を普段通り楽しむことができる。
デジタルシミュレーションに基づいた精密な設計により、生えてこなかった前歯を「ただ並べる」だけでなく、健康な咬み合わせへと導きます。
※乳歯と永久歯が混在している混合歯列期には、「インビザライン・ファースト」を使用することが一般的です。
生え変わりが遅いと感じたら、早めの受診を
お子さまの前歯が生えてこない場合、原因を正しく特定することが必要です。そして、成長の力を利用できる時期に適切な対処をすることで、将来の大きなトラブルを未然に防ぐことができます。
また、定期健診の習慣が身についていれば、あらかじめレントゲン撮影を行って、永久歯の位置や過剰歯の存在、先天性欠損の有無などの確認が可能で、萌出時期などの予測が可能です。
お子さんの歯の生え変わりについて、少しでも違和感があったら、早めに歯科医院を受診しましょう。
当院では、無料カウンセリングを受け付けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。